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あみのドミノ

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10、両手に花というのかな



幸子が作った料理をテーブルに並べながら、ふと幸子はどれくらい私のことを知っているのだろうと思った。以前より帰りが遅いのは仕事が忙しいからだと言ってあるが、夏場は毎年暇になる。そして、家でプロ野球を観ながらビールをのんでいる毎日だったのだが。

今年だけ忙しいというのが、まあ、遅くなっても週に1、2回。あとは例年通りだから不審に思わないのだろう。亜美乃の匂いなどついていないだろうかとも思うが、幸子はあまり詮索をしない。それが幸せだよと私はうそぶく。

TVのニュースで、教員が猥褻な行為で逮捕されたことを伝えている。
「まったく、最近バカが多いなあ。こんなことで一生を棒にふるなんて」
私が言うと、幸子は「ほんとね。そんなに触りたかったら風俗へ行けばいいのにね」とさりげなく言った。私は妻の口から風俗という言葉が出てきたのが意外だった。おっとりとしてお嬢様風なところがあったが、今も変わりない。

「お金が無かったんじゃない」と私が言う。
「じゃあ、ビデオでも借りてみてりゃいいのにね」幸子がテーブルに着きながら言った。
「やはり、本物がいいんだろう」

私がうっかり本物と言ったので、幸子はちらっと私を見て「お父さん、大丈夫」と探るような目をした。
「そんなバカじゃないさ。ちゃんと」と言って私は若い本物がいると言いそうになって、「お前がいるし」と続けた。このへんが年の功というのだろうか。

幸子は、「アラ」と言ってから、納得したように食事を始めた。
「第二の新婚だものね」私は追い打ちをかける。不思議に亜美乃に出会ってからの方が、幸子に優しく出来る。以前とちがってケンカもなくなった。TV好きの妻はもう、私のことは見ていない。

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川