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あみのドミノ

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4、キス指南



亜美乃と食事をしてからまだ2日しか経っていない。私の頭の中にはずうっと亜美乃がいる。これは恋ではなかろうかと思って私は苦笑する。しかしもう中年なので昔の歌“しのぶれど いろにでにけり”とまではいたっていないと思う。妻も何もしらないだろう。

「お父さんに教えて貰いたいことがあるんだけど」と亜美乃にしては、少しためらいがちな言葉が受話器から聞こえてきたときも、表面上は「ああいいよ」と冷静に時間と場所を指定した。それから妻に「友達と会うからちょっと帰りが遅くなるよ」と電話した。受話器からは女の笑い声がしている。誰かが遊びにきているのだろう。妻は食事の用意はいらないよと言ったら、子どものように「やったー」と言ってから「ねえ、お寿司とっていい」と聞いてきた。私は不倫とまではいかないが若い娘と会うのである、即座に「いいよ」と応えた。妻は微塵も私を疑っていない。それは私が二十年以上にわたって誠実だったからであろう。私はちょっぴり会ったやましさが消えたような気がして、鼻歌がでてきそうだった。

「二人きりになれるところがいいなあ」と亜美乃が言う。私は一瞬ドキッとしたが、
「それは一緒に寝ようとと言っているみたいだぞ」と冗談っぽく言った。
「まあ、近いかも知れない」

亜美乃が、案外真面目そうに言うので私の体のどこかでコツンと反応した。
「何だそれ」
私はまだ、さりげなく冗談に持っていこうとした。しかし頭の中では“二人きりになれる”場所を探していた。

背もたれが高く、店員がうろうろしない喫茶店があるのを思い出し、向かった。
「妹さんは知ってるの」
「何を」
「二人で会うことを」
「知らないと思うよ。一緒に住んでいる訳じゃないし、あの子は彼氏がいるみたいだから。電話だってたまにしかしないし」

作品名:あみのドミノ 作家名:伊達梁川