しあわせの音
何度かそこに通って教えているうちに、彼は子供たち全員と親しくなった。子供好きな自分を再発見していた。
彼は静物画に飽きたという一人の少年に、風景画を教えることになった。芳樹という名の、その美少年は十二歳だった。
次の日曜日に車で養護施設へ迎えに行った。門の外で芳樹はにこにこしていた。
「船越さん!ぼくの妹たちも連れて行っていい?」
「いいよ。何人?」
「妹が三人いるんだ」
「三人は何歳?」
「みんな一歳違いだよ」
「芳樹が十二歳だから一番下は九歳だな」
「計算早いね。見なおしたよ」
「そのくらい計算できるよ。じゃあ、五人で行こう」
「連れて来るから、待ってて」
少年が連れて来たのも、彼に劣らず器量良しの三人だ。
「あれ?みんな油絵教室の生徒じゃないか」