しあわせの音
「船越さん?まさかと思ったけど、やっぱり船越さんじゃない!」
「え?お母さんと船越さんは知り合いだったの?」
詩織は眼をまるくしている。
「そうよ。船越さんはお母さんに仕事を教えてくれたひとよ」
「じゃあ、船越さんもタクシーの運転手をしてるんだね。知らなかったよ」と、芳樹。
「毅さん。わたしね、子供を四人も養えないから、だから施設に預けたの。間違ってる?」
「そんなことはないよ。そうか。そうだったんだね。それは仕方がないことだったと思うよ。ところで、母親が松永でどうして子どもは澤田なのかな」
大人ふたりと四人の子供たちは階段を登って鉄の扉の奥へ入って行く。
「私だけ旧姓に戻ったのよ。また逢えて嬉しいわ。もう一生逢えないと思っていたのよ」
「おい!妹たち。ふたりとも泣いてるぞ!」と笑いながら芳樹。
「そうよ。ふたりはラブラブなのね!」
詩織が微笑みながら云う。
「手を取り合った」と、まどかは泣きながら云う。