拾った人形(9/4編集)
すぐに耳をつんざく甲高い音がした。その車のブレーキ音だ。車というか、工事現場でよく見るトラックだった。
鼓膜が破れるかと思ったが、孫四郎は何とか轢かれずに済んだ。
「けど、車が軋みながら停まった時に吐き出された熱風が顔面に直撃した――こう言えばどれくらいやばかったか分かるか? ……分かりづらいか。分かった、言いなおす」
孫四郎は、車両の下に潜り込むのをギリギリで免れた状態だったんだ。
間近で見てゾッとした。車と地面の間にある隙間は自分の躰でギリギリ、自転車なんてとてもじゃないが通れそうになかった。
「もしあのまま自転車と仲良く引きずられたら……考えるだけでちょっとしたホラーだよな」
そうこうしているうちにドアの開く音がして運転手が慌ただしく走り出てきた。
そして車の前に回りこんで来るなり叫んだ。
「あんた、いきなり飛び出すたァ危ないじゃないか、お嬢ちゃん!」
作品名:拾った人形(9/4編集) 作家名:狂言巡