アイラブ桐生・第三部 28~29
「やるじゃん・・
見直したけど、名誉の負傷のほうは、
どうやら見た目よりも、すこし重傷みたいですねぇ」
黒人兵のパンチを受けて、切れている口の中は、
ねっとりとした血のために、鉄の匂いが充満をしていました。
優子がハンカチで口の周りを丁寧に拭きとってくれましたが、
あごの近くへ触わられた瞬間に、また鋭い痛みがよみがえってきました。
「おかげで助かったけど、大丈夫、あんた?」
露地の陰で着替えを終わったストリッパー嬢が、
心配して覗きこんできました。
「あんたも無茶するねわ~
本土から来た人は、沖縄の事情がわからないから
カッとしてすぐに手を出したりするけれど、
あんなところで抵抗をしたら、反対に米兵たちに殺されるわよ。
本土と違って琉球警察は、米兵には一切手出しなんかできないのよ。
あんたも、一つ間違えば逆に、MPや米兵に
袋叩きで殺されるところだったかもしれないんだよ。
・・・・でもまぁ、助けてくれたことには
とても感謝をしてるけど」
私のあごに手を伸ばしてきて、軽く撫でてからにっこりとわらいます。
「大丈夫、顔が変形したわけじゃないし、
すこし口の中が切れただけみたいだね。
・・・・それにしても、
MPを相手に喧嘩を買うとは、いい根性だ。
結構やるね、大和ンチューも・・」
作品名:アイラブ桐生・第三部 28~29 作家名:落合順平