白月と源造じいさん
源造じいさんは「ガタンッ!」という大きな音で目が覚めました。音はどうやら玄関から聞こえてきたようです。
「誰だ? こんな夜更けに……」
源造じいさんは不思議に思って、玄関の扉を開けました。
「うっ! お前は、白月!」
思わず源造じいさんは叫びました。
何とそこには白月が倒れていたのです。
熊は鼻が利く動物です。おそらく源造じいさんの匂いをたどってきたのでしょう。
源造じいさんが白月の身体に触れました。そして毛並みを撫でます。白月の身体はまだ温かかったのですが、心臓はもう動いていませんでした。
白月の口からポロッと何かが落ちました。
源造じいさんがそれを拾い上げます。それは大きなイワナでした。
「ありがとうよ、白月。お前のお土産、大切にいただくよ」
冷たい夜の空気が張り詰める中、白月と源造じいさんを白い三日月が照らしました。
(了)