「哀の川」 第二十六話
「由佳、聞いて欲しいんだ。まだ誰にも話していないことなんだけど、由佳に承知して欲しいから初めて話すよ。来年はボクも三年生だろう、そろそろ進学を考えないといけないよね。何の不自由なくパパやママの傍で暮らしてきたけど、男としてひとり立ちするためには実家を離れないと、って思うんだ。パパがそうしたように、ボクも家を出て離れて大学へ通いたい」
「どこの大学へ行こうと考えているの?遠いところ?」
「ああ、第一希望は神戸大学だけど、難しいから滑り止めの関西大学か関西学院大学にしようかと。おばあちゃんとおじいちゃんが居るから住まわせてもらえば、助かっちゃうしね」
「由佳も純一と同じ大学に行く!無理なら傍に住んで働くから。一人で残るのはいや」
「ボクは神戸にパパのご両親が居るからそう出来るけど、由佳はお金がかかるから、お母さんに負担を掛けてはいけないよ。時々戻ってくるし、夏や冬の休みは帰るから、心配しないでいいよ」
作品名:「哀の川」 第二十六話 作家名:てっしゅう