欠片
しかしこんな時に涙を見せてしまったことが気恥ずかしく、すぐに顔を逸らした。ロートリンゲン大将は何も言わなかった。
翌日、ロートリンゲン大将の許に身元引受人の書類を提出した。後のことは全てロートリンゲン大将が取り計らってくれることになった。三日後に、人事課から確認の電話が来た。それでこの一件は片付くことになった。
「添付する資料が不足しているぞ! この報告書も書き直しだ!」
相変わらず、ロートリンゲン大将は仕事に関して厳しく、怒声を浴びることもしばしばだった。それでも、俺にとってはそれがありがたくも感じられた。訳もなく怒っている訳ではなく、この叱責もまた俺の血肉となっていくのを知っているから――。
「申し訳ありません。すぐに修正して再提出します」