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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十一回・四】らぶりーべいべー

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首から提げたラジオ体操のカードには参加した証拠に押してもらえる判子が12個
タイヤを半分地面に埋め込んだ遊具の上に座って同じくラジオ体操をしに来る誰かを待つ一人の…
「やだなぁ…」
少しふっくらした唇がとんがった
「でも判子欲しいしなぁ…」
ペラッとラジオ体操のカードを裏返し押してある判子を見る
「だから帰りたかったのに~…隣町なのになんで泊まるかなぁ…」
ハァと溜息をついて顔を上げる
【別苅小学校】と校門に刻まれたその先にあるグランドにはまだその子一人しかいない
正月町には5つの小学校がありこの別苅小学校はその小学校のうちの一つでこの地区でのラジオ体操開催場となっていた
「誰も来ないし…」
朝日に照らされ飛ぶトンボを目で追いかけながら耳に聞こえるのは磯舟の帰ってくる音とカモメとスズメの鳴き声と一つの足音
「…誰かきた…?」
顔をあげその足音の主がやってくるであろう校門の方を見る
「誰だお前」
「きゃぁあ!!!!」
「危なっ!!!;」
思いもよらぬ方向から聞こえた声に驚いた体がバランスを崩し座っていたタイヤの遊具から滑るように芝生へと落ちた
「大丈夫か!?」
目を開けたそこには金色と白と青が混ざったような空と見たことない顔
「大丈夫…」
小さく返すと体を起こす
「ごめん…落ちるなんて思わなくて」
申し訳なさそうに謝ってきたのはいわゆるスポーツ刈りの少年で首からはラジオ体操のカードが下がっていた
「…えいのきょうすけ…? 一年生?」
カードに書かれていたヘッタクソな字を読む
「うん俺は京助お前は?」
京助が聞く
「あべいくえ…」
「女の子?」
阿部が答えると京助が聞き返した
「そうだよ」
「男かと思った」
へへっと京助が笑う
「だって髪短いしズボンはいてるし俺より背高いし」
立ち上がった阿部を見て京助が言う
「別苅のヤツじゃないでしょ」
京助が聞くと阿部が頷く
「正月だもん郁恵」
阿部が言う
「へーそっかぁ…だからわからなかったんだ」
京助が笑った
「おばあちゃんの家にきたんだけど帰ろうっていったのにお母さん達泊まるって言って…でも郁恵は判子欲しくて」
阿部がラジオ体操のカードを見せた
「うわー!! すげー!! 全部押してあるんだー!!」
カードを見た京助が声を上げた
「俺もいまのところ全部!!」
京助も自分のカードを自慢げに阿部に見せた
「俺さ弟生まれたからお兄ちゃんだからしっかりしないと駄目だからさ大変なんだ」
幼子特有の文法がなってません的話し方で京助が言う
「そうだんだー」
阿部が笑う