「仮面の町」 第七話
月曜日の昼に陽子から電話が掛かってきた。誰にも聞かれないように公衆電話から掛けていると前置きをして、メモをするように話した。
「いい?優子、一人目の住所から言うわよ」
「ええ、メモするから大丈夫よ」
「境川市長草町二丁目110番地、名前は岡田真人(まさと)、もう1人は・・・石ヶ瀬町三丁目22番地、名前は竹田佐織(さおり)どちらも17歳よ。そこまでしか解らなかった。救急車で運ばれた先は駅の向こうにある総合病院よ、知っているでしょ?」
「陽子、ありがとう。助かるわ・・・病院まで教えてくれて、何かの手がかりになるかも知れないから」
「気をつけるのよ。署内でもこの事故の話は誰も知らないほど封印されているんだから」
「解ったわ、よく調べられたわね」
「山崎警部の机を調べたの。朝早く出かけて誰も居ないときにね。事故の調査票は閲覧出来るようになっているんだけど、その日のことは書かれてなかったの。あなたが話してくれたように、極秘になっているようだったわ。いつも置きっぱなしの彼の手帳にメモ書きされていたから解ったの。ラッキーだったわ。もし書かれていなかったら、お手上げになっていたからね」
「そう・・・山崎警部もメモを消さなかったのは理由があったのかしらね、極秘事項になっているのならそんなメモ誰かに見つかったら厳罰ものだろうにね」
作品名:「仮面の町」 第七話 作家名:てっしゅう