「初体験・選択編」 第二話
翌月から新しくやって来たカローラバンで雄介は市内にある問屋へ取りに出かけるようになった。自分の車と違い後ろが荷台になっていたので積みやすく便利に感じた。新車の匂いも雄介には初めてのことで気分も良かった。
小枝子はもう雄介無しではやってゆけないような気持ちになっていた。仕事もてきぱきとやれるようになっていたし、客とのやり取りにもしっかりとしたものを感じられるし、まったくわからなかった楽器の客への応対もやってくれているし言うことがなかった。
母親の典子に雄介のことを聞かれてどう答えようか迷っていたが相談する気持ちで話し始めた。
「お母さん、私はもう彼なしではやってゆけそうにないの・・・こんな気持ちになるだなんて考えても見なかったけど、どうしたらいいんでしょう?」
「小枝子、あなたが雄介さんを好きになる事はとってもよく解るの。だって辛い気持ちから救ってくれたのは彼なんだからね。でも10歳も下なのよ。その事良く考えてあげてよ。今はいいけど将来辛くなるから、きっとあなたが」
「そうね。今でもそう感じられるときがあるから尚更よね。それに離婚しているから世間では出戻り・・・雄介さんのご両親だって交際することには猛反対でしょうしね。まして結婚なんて・・・絶対に言えたことじゃない」
「そうよ。解ってるじゃない。雄介さんとはアルバイトが終了したらそれでお終い・・・それがいいわよ。あなたはしばらくしたら見合いでもして再婚を考えたらどう?」
「見合い?こんな女を誰が貰ってくれると言うの」
作品名:「初体験・選択編」 第二話 作家名:てっしゅう