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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(前半)

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「そうか。とうとう出動か」
「はい、お父様」
 女性にお父様と呼ばれた、顎に髭を蓄えた、白衣の似合う小太りの男は、喜びを顔で見せる。
「しかし、旦那様・・・・・・」
 執事が悲しい視線で男を見つめる。
 男は頷き、先ほどの表情を一変させ、娘に真剣な眼差しで、
「・・・・・・本当にいいのか? この先、ここに戻れる保証はどこにもないんだぞ」
 と、心配そうに訊ねる。
 女性は、何よ今さら、と思わせる態度で、
「お父様。そんなの、前々から言っている通り、この島を救うには、この方法しかないと重々承知のはずです。私はこの島の未来を変えたい。それを動かしているのは、この島を大切に想う私の『心』。その『心』のままに、突っ走るだけですわ!」
 一人娘の岩のように固い信念に、父親は言葉が思い浮かばない。
「わかった」
 ―この言葉しか。
 父の一言が重々しく感じた女性は、彼をやさしく抱きしめ、目を閉じる。
その姿は、必ず戻ってくると父に誓っているようだった。

 翌朝。
 女性は薄いベージュのコートを着て、彼女の美貌と釣り合わないリュックサックを背負い、廃墟ビルの前に立っていた。
 地下にいた大勢の研究者たちが彼女を見守っている。
「お嬢様、これを」
「ああ」
 執事から、青い球体が革製の赤いリングで固定されたものと、機械仕掛けむき出しの腕時計を渡される。
 女性は、二つとも左腕に装着する。
「使い方は心得ているな」
 小太りの父親が、心配そうに娘を見つめる。
 女性は、「うん」と父親を微笑みながら頷き、見つめる。少しでも、彼の不安を和らげるように。
 そして、昨日とは逆に、父親が娘の華奢な体を、図体を活かして優しく包み込む。
「いってきます」
 父親のぬくもりを身体に刻み、彼女は父親に背を向ける。
 そして、
「時空管理時計(タイムシフト)、開場(ゲート・オン)!」
 左腕に装着した、機械仕掛けむき出しの腕時計が青く光り、彼女の前に薄暗いゲート―時間空間道(タイム・ゲート)が現れる。
「よし。安定しているな」
 空間が安定していることを確認し、少女は往く。
 この島の未来を救う、救世主となるために―。