ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(前半)
ビルのすぐ側にある、隠された地下通路を進み、二人は研究施設へと辿りつく。
そこは、日本が推進しているデジタルテクノロジーを研究している未来的な施設だった。
どうやら取り残された研究者によってつくられた場所のようだ。
研究者たちは、何もない場所からネットワークを開き、本州にある研究基地に連絡している。皆、信用できない政府の代わりに、自分たちの足で、懸命に足掻いているのだ。
「ただいま」
女性が自動ドアから姿を見せた途端、研究者たちは全員立ち上がり、総動員で、
「お疲れ様です!」
と、一礼し、盛大に出迎えた。
「う~ん、私は皆と同じように迎えてほしいのだが・・・・・・」
丁重に自分を迎えてくれる彼らに、思わず苦笑してしまう。
「何を言っているんですか! この島の未来のために戦ってくれるお嬢様をぞんざいにできませんよ!!」
一人の男性科学者が熱弁する。
すると、
「そうですよ!」
「あなた様こそ、この島の救世主!」
「我々、島の民の希望!」
と、次々と賞賛の声が浴びせられる。
女性は、まあまあ、と両手を出して、
「分かった。分かったから、落ちつけ!」
科学者たちの興奮を抑え込む。
彼らはロボットのように、すぐに静かになる。従順してくれて助かる、と彼女は心の中で安堵する。
彼女は、先ほど使った小さな円形の機械を取り出し、研究者に渡しながら、
「無事に成功したぞ」
と報告する
おお~、と研究者たちは喜びを隠さず、近くにいる者とハイタッチを交わすなどして、共有する。
「では、ついに・・・・・・」
「ああ。出発準備を整えてくれ」
女性は、頷きながら指示を与える。
「了解です! みんな、準備だ!!」
「おおっ!!」
研究者たちは、一斉に自分の持ち場に座り、残っているデジタル機器(機械のプログラムを作るために必要)に立ち向かい、準備を進めていく。女性から朗報が伝えられたのか、彼らの士気は最高潮に達している。
「ふぉっふぉっふぉっ、みなさん元気ですな~」
執事は、彼らを微笑ましく見つめる。
女性もフッ、と微笑む。
「当然だ。この島の平和のために、一歩動いたのだからな。・・・・・・さてと、私も準備しなくては」
女性と執事は、奥にある自分たちの私室へと歩いて行った。
作品名:ヘリテイジ・セイヴァーズ-未来から来た先導者-(前半) 作家名:永山あゆむ