僕の八代美
弐
八代美が泣いている。
窓に向かってふわりとたたずみながら、泣いている。
小さな肩が小刻に震えている。
でも僕にはどうすることも出来ない。
今の僕に彼女の心を理解することは出来ない。
きっと死ぬまで無理だ。
「…ねぇ」
八代美が鼻声であっちを向いたまま言った。
彼女は強がるのが下手くそだ。
だからあっちを向いている。
「…ん?」
「…頭を撫でてよ。」
僕はそっと頭を撫でた。
八代美の頭を通過しないように、そっと。
八代美の周りは思いがけずひやりとした感触がした。
僕は嬉しくて悲しくて少しだけ泣いた。