僕の八代美
参
八代美が笑っている。
僕はとても嬉しい。
八代美、僕の八代美。
僕だけの。
「ねぇ克彦」
八代美がさも愉快そうに僕を呼ぶ。僕しか知らないあのニュアンスで。
「何?」
「さよならね。」
え?
と言う間もなく八代美は消えた。
どうやら僕はフラれたらしい。
八代美は理由を聞くことすら僕に許さなかった。
ずるい。…そして随分と楽チンだ。
八代美はそういう女だった。
「克彦先輩」
みしらぬ女が立っていた。
何秒かたって同じ委員会にいたことに気付く。
八代美の様におよそ可愛いげのない目付きの女だ。
でも僕は
「何泣いてるんですか気持悪い」
でも
「君には関係ないよ」
僕は八代美が好きだった。多分想像以上に。
「…嘘です。可愛いです。」
女は白い肌を僕に向けて笑って言った。
でも透けてなどいなかった。