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電車で会った魔女

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マコの話術のせいか魔術か、オレは今現在の状況が不思議な世界に入っているような気分になってしまった。マコと二人だけの世界に。

自分の降りる駅、それだけは頭に残っていて、オレは窓外の景色を見る。どこかの駅に近づいたようで電車のスピードがゆっくりとなった。駅名を確認したら、自分の降りる駅の一つ手前の駅だった。マコに出会ってからいくつもの駅に停車し、発車していたことになる。その間の駅について何の記憶も残っていない。

オレは横に座っているマコを見る。その左手には依然として竹箒があった。オレはその竹箒に触れてみようと手を伸ばした。左隣にマコ、オレは右利きだからピッタリ寄り添う形になった。

「あら!」マコが意外そうな声を出した。
オレは、その生々しい声に動作を止めた。そして触れたマコの二の腕の柔らかさに、魔法が解けたような気分になった。結局、竹箒には触れることが出来なかった。もう長い間実物は見ていなかったし、確定はできないのだが、それはありふれた竹箒だと思えた。

魔法は解けた? いや魔法そのものが単なる会話のはずみかもしれない。アルコールの酔いはもう醒めている頃だった。でも、このままマコと一緒にいたいという思いは続いている。

「キヨシさん、次降りる駅でしょ」
マコがまじめな表情をしてそう言った。オレは自分の降りる駅を教えた記憶はないのに?と思いながら「どうして判ったの?」と口にした。
マコが「もちろん、ま」と言いかけたのを、オレは「魔女だから?」と遮った。
ちょっと残念そうな表情になったのも、可愛いと思った。調子に乗ったオレは会話を続けた。
「オレも判った。マコさんは終点で降りる」
「え~っ、どうしてぇ」
「魔法使った」と、オレは、咄嗟に言った。この先は二駅しかないし、終点の乗客が多いのは知っていたからだ。
「すご~い」と、マコは笑いながら言った。

作品名:電車で会った魔女 作家名:伊達梁川