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電車で会った魔女

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そもそも、冗談で自称魔女がどこまで答えきれるのかという興味で始めたのだったが、まだボロを出してはいない。オレはこれならどうだという質問をしてみることにした。

「じゃあ、魔女だから出来るもので、今出来ることあります? 魔法とか」
「もう、あなたにかけてありますよ。ふふっ」
魔女はちょっと悪戯っぽい表情をしてそう言ったが、オレには魔法にかかった覚えはなかった。
「ははは、面白い人だ。オレはもう魔法にかかっているんだ。もしかしたら今、ブタにでもなってるのかなぁ」
自分が言ったブタにでもなっているかなぁに念を押すように、オレは自分の身体を眺め回し、おおげさに両手を広げて「変わってない」と言ってみた。

魔女がふふふと小さく笑った。最初見たときに、かなり若く感じていたが、あれっ、もしかしたらオレより上か? と思えた。それだけ落ち着いた表情に見えたのだ。

「気がつきません? ほら、自分の身長より長い竹箒を持っているのに、乗客の誰も見てないでしょう。これだけ乗っていれば、何人かはちらっと見るか、じいっと見るとか興味を持つのが普通よ」
「えっ、よくわかんないなあ」
オレはこの可愛い魔女の言っていることが、すぐにはわからなかった。すぐに魔女が、オレの耳のそばで「だから、あなたにもう魔法をかけているといったでしょ」と言った。
「えーっ!」とオレは大きな声を出してしまった。乗客の何人かがこちらを向いたのが見えた。

「ということは、オレにしか竹箒が見えていないの?」
「それはヒ・ミ・ツ、ふふふ、かけたのは別の魔法よ」

オレは、冗談で始めたつもりの会話が意外な展開になってしまったので、少し頭を冷やして考えてみようとした。実際にこの女は竹箒を持っている。都会の乗客は他人のことに干渉しないし、奇抜なファッションや持ち物には驚かない。自宅の庭が広く樹木があれば、竹箒を買って帰ってもおかしくはない。

そう結論づけてオレは、またこの魔女との会話を楽しむことにした。

作品名:電車で会った魔女 作家名:伊達梁川