ふたりの漂流記
「数えると十五年振り。同窓会にどうして来なかったの?」
「だから、母が嫁いだからよ。引っ越したから、案内状を受け取れなかったということだわ」
「そういうことだね。でも、会えたね」
「そうね。会えた」
「じゃあ、お通夜のあとだけど、ふたりだけの同窓会だ」
白瀬がそう云った刹那、圭は再び泣き崩れた。白瀬は圭を抱き、泣きやむのを待った。そうしているうちに彼のまぶたからも涙が溢れ出た。普通に再会していれば恋愛をして結婚できたかも知れない。だが、今は陸地から遥かに遠い大海原を漂流する船に乗っている。
無線機を始め、操舵室の機器はことごとく破壊されてしまったようだ。そんなことになっていなければ助かる見込みもあるが、恐らくは太平洋の中央海域へ向かって流されて行くだけだろう。長さ62フィートもある豪華クルーザーも、広大な太平洋の上に出てしまえばまるで目立たない存在である。小笠原かハワイの近海にでも流されて行けば生還できるかも知れないのだが、そううまく事が運ぶとは考えられない。