ふたりの漂流記
「星がきれいね。とても数え切れないわ」
唐突に背後から迫ったその声は、そのことばに相応しい清らかさだった。だが、振り向いた白瀬はぎょっとした。足元からの照明を受けているせいか、圭の顔は不気味だった。それは死んだ女の顔だと思った。
「何ですか?そんなに怯えた顔をして」
「ここは寒いから、中に入りましょう」
白瀬はサロンに戻ってソファーに腰をおろした。
「お腹がすいたら冷蔵庫から適当に出して食べてください。ワインもたくさんあります」
そう云ってから黒のスカートとブラウスという姿になっていた圭も、少し離れて大きなコの字型の白いソファーの、血痕のないところを選んで座った。
「……」
「わたしも、食欲がありません」