ふたりの漂流記
「……そちらは、どこに居たんですか?」
「わたしはね、海賊の一員です。寝室のひとつに金庫があって、それを開けるために残りました」
「海賊の一員ですか?冗談でしょう」
「……」
「で、金庫には何が入っていたんですか?」
「現金だけでした。百万円が二百束です」
「本当ですか?この船の値段が一億五千万円だと聞きました。オーナーの社長がそう云ってました」
「そうですか。じゃあ、もう一隻買える金額が、金庫に入っていたということになります」
「でも、そちらはどうしてそんなに濡れているんですか?」
「あのう、わたしの名前は川村圭と云います。名前で呼んでください」
「圭さんですか。私は白瀬孝之です……でも、おかしな話ですね。犯人グループの一人が名乗る筈がありませんよ」