ふたりの漂流記
「でも、できたのはあなたひとりだけだったわ。正直に云って、あの日に初めて、わたしはあなたに恋をしたのよ。孝之さんは?」
「フォークダンスのときだったなぁ。屋上でフォークダンス。したことあったよね。至近距離で圭ちゃんと視線が合ってしまって、あの瞬間心がギックリ腰になったみたいに、恋の病に墜落して行ったんだぁ」
「その日、わたしは学校を休んだのよ!じゃあ、あなたの心をギックリ腰にしたのは美由紀ちゃんね!」
「嘘だ!圭ちゃんだよ。きみはあの日、ちゃんと登校しました。だって、手造りのチョコレートをくれたんだよ。ほかの男子には絶対にあげないからって、眼に涙を浮かべながら云ったじゃないか」
「そうね。わたしは確かに、あの日、登校したわ」
「この盛り上がりのなかで、今夜結婚しよう」
「じゃあ、後ろへ行って、お星さまを見ましょう。きれいな流れ星が見えたら、結婚しましょう」