ふたりの漂流記
「そうよね。灯りで合図するのね?」
圭は少しだけ眼を輝かせた。
「そういう努力はしたいね」
「ロビンソンクルーソーの話は知ってる?」
「知らないわ。全然」
「あの話は無人島でずっとひとり寂しく暮らす男が主人公だった筈だよ。その点、僕は漂流する船の中ではあってもね、ずっと会いたいと思っていた圭ちゃんと再会できた。比較すると全然ハッピーだよね」
「無人島でひとり暮らしは辛いわね。でも、ずっと暮らせたのね」
「あっ、元無人島だね。ロビンソンクルーソーが住んでいれば無人島じゃないもんね。それはともかく、この船でずっと暮らせるなら、しかも圭ちゃんと一緒なら、悪くないと思うよ。ぼく的には」
「水と食料がなければ死んじゃうよ」
「でも、釣り道具があるから、魚を釣って食べられる。まな板も包丁もあるし」