アイラブ桐生 第二部・第二章 23~25
甲突川にかかっている『5つの石橋』は価値のある文化遺跡なので
それを見学しながら、ゆっくりと散策してきては
どうだとすすめられました。
埠頭から北へ歩くこの海沿いの道からは、振り返れば錦江湾越しに、
常に桜島を見ることができました。
さらに海に沿って北へ歩くと、やがて目的の川に突き当たりました。
この川沿いをさかのぼれば鹿児島の『おらが自慢の5つの石橋』を見ることができます。
そこまで行って来いという地元の意見に従い、足を伸ばすことに決めました。
乗船までの、暇つぶしにはうってつけです。
美女二の人に両脇を固められて、温かい春の日差しの中、
河に沿ってさらに歩き始めました。
美恵子の沖縄行きは、
「全青連」(全国青年団連合会)という組織の
海外派遣事業のひとつです
当時の青年たちの代表的な組織としては、
農業後継青年たちの「4Hクラブ」と、
一般的な男女の交流の場としての「青年団」がありました。
地域社会そのものが、
しっかりとした上下関係と共に、
綿密な横のつながりを持っていた時代です。
娯楽の少ない時代に、多くの青年たちがこの
「地域青年団」へ参加しました。
趣味のサークル活動などを中心に、たくさんの親睦行事を通じて
地元の男女たちが交流を深めました。
男女の出会いの場としての役割はきわめて強く、
多くのカップルがここでの活動を通じて誕生しました。
「全青連」とは、それらの地域青年団の
頂点にたつ全国組織のことです。
沖縄への派遣事業といっても、
派遣自体に補助金はなく、すべてが自己負担による自主参加です。
沖縄返還運動のひとつとして、終戦直後から
引き継がれてきた事業の一つでした。
全国各地から沖縄へ集結をして、沖縄各地の青年団や地域の人たちと
交流と親睦を深めるのがその主な目的です。
現地集合と現地解散・・それもまた大原則です。
団体旅行の形で乗り込まないのは、
施政権返還前の植民地的支配の実態を
個人個人で、肌で感じてもらうための配慮です。
今の沖縄が置かれている現実は、
まさに未来の日本の現実そのものだからと、
恵美子と優子が立ち停まって力説を始めました・・・・
両サイドから、美女の熱い視線に挟まれてしまいました。
「おいおい、
昨夜は寝まきの一件で振り回しておいて
酒が抜けないうちに、今度は政治の話で猛プッシュかい・・・
頼むよ、あまり俺を翻弄しないでくれ。」
作品名:アイラブ桐生 第二部・第二章 23~25 作家名:落合順平