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アイラブ桐生 第二部・第二章 23~25

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 沖縄は、戦後20年余りにわたって
日本の法律も、アメリカの法律も適要されないままに、
軍事政権の支配下で、強制的に支配されてきた軍事最優先の島です。
特にベトナム戦争が激しくなってきた60年代の後半になると
コザ市(今の沖縄市)は、ベトナム派遣の兵士たちの休暇地として、
遊興と飲食でたいへんな賑わいをみせました。
Aサイン(米軍OKのサイン)を掲げる飲食店は、
沖縄全土の3割を占めるほど、ここコザに集中をしています。



 そうした背景としては、この中部地区一帯に、
海兵隊基地を中心に、きわめて大規模な米軍施設が集中したためです。
極東最大の規模をほこる「嘉手納」空軍基地の存在は、
あまりにも有名です。
米兵たちのたび重なる犯罪や暴挙に 市民がたちあがり、
米軍施設や車を焼き討ち事件に発展をした暴動が、コザ事件」です。
(詳細は、のちほど再掲載します)



 優子の出身地は、伊江島です。
那覇からは海沿いに西海岸を北上をします。
中部にある巨大な米軍施設群を抜けてから、
西へ突き出た本部半島をめざします。
そこから見える、東シナ海に浮かぶ小さな小島が伊江島です。
恵美子のほうは、沖縄派遣の結団式のために、2日ほど
那覇とその周辺へ滞在をする予定です。
再会を約束して、船の上陸地点で別れることになります。



 「群馬は、どうするの?」


 そう聞かれましたが、特に予定はありません。
優子が、米軍の射爆場が伊江島に有るので、
一緒に行くかと誘ってくれました。
とりあえず、(面白そうだと)同行することを決めてしまいましたが、
しかしこれがまた、後々でたいへん後悔を
する羽目になるのです・・・・



 「うわぁ~」

 ようやく船酔いから生還をはたした恵美子が、
輝く海面を覗きこみながら、実に大きな歓声をあげました。
那覇の市街が青い海面の彼方に、白く輝いて肉眼にも見えてきました。
長い船旅がようやく終わろうとしている時刻です。
浅くなってきた透明な海は、足元に横たわるサンゴ礁と
真っ白な砂を一面に敷き詰めた海底を、どこまでもさらけ出しています。
何処までも透き通り、透明度をほこる浅瀬です。
覗きこむ視線の先を邪魔をするものは、舳先から後ろへ向かって
次々と砕けていく、白い波と航跡だけでした。



 鹿児島港からは、まる一昼夜。
那覇港へ上陸したのは、午後7時を少し回っただけで、
ほぼ定刻で最終地へ到着しました。
恵美子はここから全青連が指定した宿舎へ直行します。




 「群馬~、ちょっと!」

 美恵子が帽子のひさしをちょこんと持ち上げながら、
私を呼んでいます。


 「ちょっとだけ、耳を貸してよ・・」

 なんだろうといぶかりながら、横顔をむけたら、
いきなり両手で顔を挟まれて、
ほっぺにチュッとキスをされてしまいました。


 「美女二人の、度重なる誘惑にも負けることなく、
 無事にここまで到着した事への、私からのご褒美です!
 あんたも、いい人生のきっかけが此処で見つかるといいわねぇ。
 じゃぁ、ここでお別れです。
 て、あ~あれ~、・・・
 3日後には、再会の約束だったわねぇ
 何をあせってんだろ~あたしったら・・
 沖縄到着で、今から舞い上がっていてどうするんだろう。
 んじゃ、またね~」

 苦笑いの恵美子を乗せたタクシーが、那覇の市街へ消えていきます。

 「わたしはしないわよ、キスなんか・・・・
 期待しないでちょうだい、群馬 」