「仮面の町」 第六話
「ねえ優子、この前の人あなたの彼なんでしょう?」
「そうよ。まだ付き合って間もないけど、私家出したから一緒に暮らしているの」
「家出したの!優子本当に?あなたが・・・」
「ビックリでしょう・・・父親と言い争いになって、つい出て行け!って言われたから、そうしたの」
「普通はそう言われても出てゆかないでしょう?よっぽど酷いことを言われたのね」
「酷い事じゃないけど、父親が尊敬出来なくなってしまったから・・・」
「何を言われたの?良かったら話して欲しい・・・」
「そうね・・・簡単に言うとね、自分の身の安全を家族より優先したからなの」
「解らないわ、どういうこと?」
「久能不動産の関係で仕事しているじゃない父は・・・私が今調べている事で父親の立場が悪くなるって思っているのよ」
「調べている事?ひょっとして訪ねて来た天木さんが聞きたかった事と同じなの?」
「そうよ。先月の交通事故のことなの。若い男性が二人乗りしてひき逃げに遭った事故の件なの」
「そんな事があったの、知らなかったわ」
作品名:「仮面の町」 第六話 作家名:てっしゅう