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てっしゅう
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「仮面の町」 第六話

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母親は名前を里枝といった。旧姓は水野姓。兄が居て家を継いで嫁と三人の子供と一緒に両親と暮らしている。兼業農家になっていて兄は久能不動産の下請け会社で働いていた。両親と嫁が手伝って野菜を作る農作業を続けていた。戦前は大きな土地でコメを作っていたのだが、農地解放で小さくされ、諦めて野菜作りに転業した。今はそうしてよかったと両親は考えていた。もう農業は自分達の代で終わらせる決心もしていた。そういう意味でも里枝は帰る場所が無かった。農業で忙しければ人手が欲しかったであろうが、今となっては厄介者扱いにされてしまう。それだけは惨めなので実家に身を寄せることだけはしたくなかった。