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君にこの声がとどくように

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「ナインよ」
 義父の声が、優しくそして力強く頭に響く。
「父上」
 ナインは淡い希望など抱いていない。
 ルドラを倒すこの時のために、自分の中に留まっていてくれたのだと理解している。その目的が果たされた今、これ以上を望むことはできない。
 これから交わす言葉は、別れの言葉だ。
 それ以上の何を望むことがあるだろうか。
「父上。たくさん話したいことがあります。たくさん聞いて欲しいことがあります。まだまだ教えて頂きたいことがあります。僕は愚かでした。そのせいで父上も、キャスも……僕は許されない罪を犯してしまった」
「神はお前のすべてをお許しになるだろう」
「許されるわけがない! のうのうと生きていけるわけがない!」
「お前に与えられた罰は『生きる』こと。人は前にしか進めないものだ。ナイン、お前はお前らしく生きるのだ」
「僕は何もできない! いまだって! 僕は何もできなかったじゃないか!」

「お前は、よくやった」

 それはナインがクオンに言って欲しかった言葉だった。
 ずっと、ずっとクオンに誉めて欲しかったのだ。

「父上……僕を置いていかないで……」

 ナインの掠れた声は、彼自身の流した涙に溶け込んでいった。

「よくやった」


 空はどこまでも青く澄み渡っていた。