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君にこの声がとどくように

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「それだけの罪を犯したからな。だが、聞いてくれるか? 父は幼い俺にこう言った。『父を越えてみせよ』とな。だから俺は、あらゆる手を使って父を越えようとした。現に父が存命の間に当主になったのも、俺が父を越えたからだと思わないか?」
 ナインは何も答えない。
 ただじっと、直立不動のままだ。
「憎らしいな。何もかも分かったような顔しやがって。その目がアイツにそっくりだ。父もそんな目をして俺を見ていた。哀れむような蔑むような、そんな目だ。周りの評価なんてどうでもよかったんだ。俺はそのことに気付くのが遅すぎた。気付いたときには、もう止まれなくなっていた。こういうのを懺悔というのか? 貴様なんぞに話したところでどうなるものでもあるまいに」
 アランは自嘲する。
「神はきっと、アナタをお許しになるでしょう」
「私は神に許される覚えはない!」
 再び高圧的な口調に戻る。
 だが、スッキリとしたその表情は実に晴れやかでもあった。
「だから、天国にも地獄にも行ってやらんことにした。さぁ、もういい。貴様に頼むのは、最初で最後だ」
 アランは小剣を投げ、ナインの足元に刺す。
 ナインは無言で引き抜き、そして頷いた。

 翌朝、王都エルセントの東門を行きかう人波の中に、ナインの姿があった
「キャス、待たせたね。いまから迎えに行くよ」
 ナインはその一歩を確実に踏み出した。

 屋敷で発見されたニアライト・アランは、明らかな他殺体であったが誰もその犯人を捜すことはしなかったという。


          ― 第一章 聖騎士たち 了 ―