太嫌兎村
世の中って、ホント不思議なことがあるものなのですね。
それも…この日本で。
これから紹介する物語は、コメディー。
いや、ひょっとしたら大人向けの童話なのかも知れません。
皆さま御多忙のことと思いますが、少し時間のある方はここらでちょっと御一服。
このお気楽話しで、傷んだ心を癒やして頂ければ感謝感激雨霰(あめあられ)です。
高見沢一郎は、とある町のオフィスに勤めるサラリーマン。
今、仕事を終えて、薄暮(はくぼ)の街へと飛び出した。
そこはもうネオンが灯り始めていた。
夜の賑わいを待つダウンタウン。
高見沢は疲れ切っているのか、ぷらぷらと歩いている。
そして、ほぼ無意識状態でビルの谷間の向こうに視線をやれば、都会風の白っぽい月がぽっかりと浮かんでいる。
「なんだよ、あの月は…現代文明で干からびて、マッチロケだよなあ、…色気も何もない」
高見沢はそんなことをボソボソと口にする。
そしてその反動なのか唐突に、あの時の出来事を…。
つまり、あの不思議な光景が瞼の裏にくっきりと浮かんでくるのだった。
「あれは一体、何だったんだろうなあ。だけど、あの赤い月夜の可愛いバニーたち、彼女たちにもう一度会ってみたいよ、勇気を出して行ってみようかなあ」
高見沢はぶつぶつと、こんな独り言を呟いた。