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伊野はや子
伊野はや子
novelistID. 35938
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詩集:月を見上げる

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ちょっとそこまで


月にいくのは簡単なこと
いずれはそんな時代が来るのだろう
そして太陽系ツアーに参加する

まずは大三角形の中心に立って
ベガ、アルタイル、デネブを従え
ついで月を見下ろし
火星と水星をまたぎ
木星をすりぬけ
金星のあいだをまわり
土星のわっかをはずしてみる

太陽から数えて七つめの天王星が
二十と七つの子分を巻き込み
花見と海開きと紅葉刈りと正月の
準備をしているそのかたわらで
宇宙船は海王星までひとっとび

海王星ではふしぎなことに
ジャンプをするととおくの昨日
スキップすればとおくの未来が
宙に浮かんで見えてくる

満足だ、さあ次へ
冥王星はしばらく先に
とおくてちいさい星だから
見逃さぬよう気を付けて

しかしここでツアーは終わる
冥王星はちいさすぎるってね

不満にだれかがデブリを蹴る
(蟻ほどちいさいわけでもあるまいし)

作品名:詩集:月を見上げる 作家名:伊野はや子