詩集:月を見上げる
夜明けを告げる女神
うすく伸びる帯をまとい
輝かしき光を放ち君臨する女神
その光によって
凍てつく夜空は包みこまれた
それは母の愛よりもやさしく
赤子を抱く羊水よりもあたたかで
いかなる女たちよりうつくしい
エロティシズムさえ持っている
昭和の乙女であった紫
聡明で慎ましやかな緑
温和な性格を匂わす橙
情熱をもって弾ける赤
妖艶なうねりを見せ
絶頂へと突き抜けたあと
なんぴとたりとも敵わぬ美をもって
北の地に舞い降りた女神はいま
夜空に溶けこむようにして
薄く、弱く
吐息をこぼして消えていく
女神が去ったその土地は
隠し切れない希望で色づく