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ただ書く人
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ヒョットコ解放宣言

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Z「Bさんと同じような仕事ですね」
C「そうですね。少し違うのは、こどもがわたしのこどもだということです」
Z「Cさんのお子さんですか。では、その、プライベートなことを聞きますが、父親はどなたですか」
C「父親はわたしの夫です」
Z「その方は同じヒョットコですか」
C「いいえ、あなたと同じ種類の人です」
Z「夫、とおっしゃいましたが、結婚をされているんですか」
C「はい、そうです。思い出しました。わたしの仕事は専業主婦です。近所のともだちがいっていました」
Z「なるほど、結婚ですか。ありがとうございます」

Z「次に、みなさん、現在の生活に不満はありますか」

A「特にないです。家もあります」
C「わたしもないです」
B「不満、とは何ですか」
Z「そうですね、Bさんは家の中で嫌なことや辛いと思うことはありますか」
B「ありません」
A「あの、すみません、知っていると思いますが、ヒョットコは眠る場所があれば他に何もなくても大丈夫ですよ」
Z「はい、存じています。そうなのですが、欲しいものがあったり、やりたいけどできないことがあったりしませんか」
A「いいえ。眠る場所があれば大丈夫、と先ほどいいました」
Z「なるほど。では、AさんはTさんに命令されて困ることなどはありますか」
A「命令という言葉は知っていますが、Tさんに命令をされたことがありません」
Z「言葉が悪かったですね。Tさんに嫌なことをお願いされたり、いわれたりすることはありますか」
A「ありません」
Z「なるほど。ありがとうございます」

Z「では眠る場所についてですが、みなさんが今住んでいる家について教えてください」

A「ぼくはTさんの家の近くのアパートメントに住んでいます」
Z「部屋は広いですか」
A「広くはないと思います。でも、以前住んでいた保護区の地下住居より少し広いです」
Z「足りないものはありますか」
A「いいえ。先ほどもいいましたが、眠る場所があれば他に何もなくても大丈夫です。それに、Tさんが弟や友人も同じアパートメントに住めるようにしてくれたので、いつでも会うことができます」

Z「Bさんの家はどちらですか」
B「ママとパパとMちゃんと同じ家です」
Z「住み込みですか。部屋はきれいですか」
B「よくわかりません。でも掃除はいつもしています」
Z「ベッドや机、テレビなどはありますか」
B「はい、あります。でもベッドと机はあまり使っていません」
Z「どうして使わないんですか」
B「ベッドより床の方が眠れますし、机は……、家であまり勉強をしないので」
Z「では、部屋に不要な家具を置かれているんですね」
B「よくわかりませんけど、そうかもしれません」
Z「わかりました。ありがとうございます」

Z「Cさんはどうですか。旦那さんといっしょに住んでいますか」
C「はい、そうです」
Z「不自由なことなどはありませんか」
C「えっと、わたしは夫と、あなた方の種族と同じような生活をしたいと思っています。それで、わからないことがあったりします」
Z「具体的にはどういったことでしょう」
C「料理の仕方がわからなかったり、洗濯機の使い方がわからなかったりです。でも、近所のともだちや夫が助けてくれますし、今はもうほとんど覚えました」
Z「なるほど。合わない生活スタイルに苦労をされているんですね」

Z「ところで、みなさんは給料などはもらっていますか」

A「あの、ヒョットコはお金をもらってもそれで何かを買う必要がありません」
Z「そうかもしれませんが、働いたらお金をもらうことは当然の権利ですよ。AさんだってTさんに時間を拘束されているんですから給料をもらうべきですが、もらっていませんか」
A「Tさんは最初お金をくれるといいましたが、要りませんので断りました」
Z「では、何ももらっていないんですね」
A「はい。Tさんは必要になるかもしれないから積み立てておく、といっていました。それと給料はもらっていませんが服をもらっています。書店に行った時に小説や漫画を買ってくれることもあります。あとはごはんを食べさせてくれたり……」
Z「無給で拘束されているんですから、もっと要求してもいいと思いますよ」
A「でも、必要なものがないんです」

Z「Bさんは給料をもらっていますか」
B「よくわかりません。給料がお金のことならお金はもらっています」
Z「それは給料ではないお金なんですか。失礼ですが金額はどれくらいでしょうか」
B「ゲームのソフトが買えるくらいです」
Z「ゲームというのは、こどもたちがみんな持っているあの携帯型のゲームでしょうか」
B「そうです。わたしも持っています」
Z「そのソフトが買えるくらいですか。たったそれだけしかお金をもらっていないんですか」
B「いいえ、とてもたくさんです。それを毎月くれます。お小遣いです」
Z「なるほど、お小遣いですか」
B「はい、Mちゃんよりお金が多いです」
Z「お小遣いは何に使いますか」
B「よく服を買います。ゲームのソフトを買ったこともあります」
Z「服ですか。Mちゃんのお母さんは服を買ってくれませんか」
B「ママもパパも服を買ってくれます。でも、他にもたくさんあるとうれしいです」

A「いやあ、ぼくはこの服ってあまり好きじゃないですね」
Z「Aさん、どうしてですか」
A「昔のヒョットコは服を着ません。ぼくも保護区では着ていないことが多かったです」
Z「どうして今は服を着ているんですか」
A「知らないのですか。服を着ていないと外に出られません。保護区以外で服を着ないで外に出るのは犯罪です」
Z「確かにその通りですね」

Z「Cさんはいかがでしょうか。給料やお小遣いなどはもらっていますか」
C「少し違いますが、食費をもらっています」
Z「それは確かに違いますね。食費以外にお金はもらっていませんか」
C「はい。でも、余った食費は好きなことに使っても大丈夫です」
Z「なるほど、そういうことですか。実際に食費は余りますか」
C「はい、たくさん余ります。今はたくさん預金があります」
Z「好きなことに使っても大丈夫、ということでしたが、預金をしているんですか」
C「はい。Aさんがいいましたが、ヒョットコは眠る場所があれば他は要りません。欲しい物はあまりないので預金をしています」
Z「では、何も買ったことがないのでしょうか」
C「いいえ。みなさんの生活を真似して、わたしも服を買ったりします。他にも掃除機を買ったりこどものおもちゃを買ったり……、それと夫の誕生日に時計を買いました」
Z「なるほど。ありがとうございます」


 端折ったところはあるが、概ねインタビューではこのようなやりとりがなされた。彼らの生活には多くの不満があるはずだが、情報の保護を約束したインタビューの場であっても、いいたいことをいえずいるのだ。あるいは三人とそれぞれ個別にインタビューの場を持つべきだったのかもしれない。それでも彼らの言葉から、ある程度生活の問題などを窺い知ることができた。
作品名:ヒョットコ解放宣言 作家名:ただ書く人