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ただ書く人
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ヒョットコ解放宣言

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 まず、壮年男性のAさん。彼はTという男に雇われているが、なんと給与が支払われていない。住んでいた保護区から連れだされてTの自宅近くのアパートメントに住まわされている。弟さんや友人たちも同様らしい。そして、彼がいっていた「ヒョットコには眠る場所があれば他に何もなくても大丈夫」という言葉は、彼の住むアパートメントの一室に「何もない」ことを表している。
 普段はTの職場やレストラン、書店などに連れ回されており、食べたくもない食事に付き合わされ、着たくもない服を着せられ、聞きたくもない仕事や家族の愚痴を聞かされている。「ボディーガード」という名目を与えられているのは、いざという時に盾にされる役割、ということだろう。
 さらに、インタビュー後に聞いた話ではTに「そろそろ結婚を考えろ」とセクシャルハラスメントまで受けているらしい。とんでもない話だ。

 次に、なんとまだ十二歳のBさん。十二歳という年齢で労働をさせられていることに、わたしはひどく胸を痛めた。若年でありながら、ベビーシッターの他に家の掃除までさせられている。そして、その労働に対してゲームソフトを買える程度という、本当にわずかな「お小遣い」という給与しか与えられていないのだ。さらには、行きたくもない学校に通わされ、家でも勉強を強いられているという。これによって、Bさんに知識や技術を身につけさせていずれ他の仕事もさせよう、という雇い主の思惑がわかる。
 生活環境も過酷で、不要な家具が置かれている、おそらく物置と思われる一室に軟禁されているらしい。そして、自分の着る服すらもわずかな「お小遣い」で買わなければならないという。すぐにでも児童虐待として訴えるべきだろうが、インタビュー時に得た情報を秘匿しなければならないわたしの立場からは、それが行なえなかったのが悔しくてならない。

 最後に二十代後半の女性Cさん。今回インタビューをした三人の中で、この方の生活は最も辛いものかもしれない。「夫」と呼ぶ男に性的行為を強要されたらしく、それは数年前から現在まで続いているらしい。そして彼女はこどもを産まされていた。普段はそのこどもの世話や多くの家事をやらされており、その労働に対してBさんのように、こちらは「食費」という名目の、やはり不十分な給与しか与えられていない。そして、そこから自分の服を買う他に、仕事の道具である掃除機やこどもの玩具まで買わされているのだ。本来聡明な女性のようで、なんとかやりくりをして貯金をしているのだろうが、なんと「夫」の時計まで買わされていた。
 また、本来のヒョットコとは違う生活スタイルを強いられ、それに戸惑っているようだった。近隣の住民との交流も彼女の役割とされており、そういった普段の生活には非常に強いストレスがあるものと思われる。体よく「結婚」などと納得させられているようだが、実情はあまりにもひどいものだった。

 これが現代の奴隷「ヒョットコ」の実情だ。このような扱いをされているヒョットコたちを放っておいてもいいのだろうか。見て見ぬふりをしていてもいいのだろうか。否。わたしにはできない。
 今ここに宣言する。わたしは必ずやヒョットコを解放してみせる。わたしはすべてのヒョットコの味方として、ヒョットコがヒョットコらしく自由に生活できる世界を作ってみせる。わたしが彼らを救わなければならないのだ。
作品名:ヒョットコ解放宣言 作家名:ただ書く人