本日、息子が嫁に行きます
本日吉日。
一般的に日柄が良いといわれる《大安》の日。
息子が、嫁と挙式披露宴を致します。
世間様が、おや?と思われても ふたりとっては念願の佳き日です。
ふたりでこつこつ貯めた資金で、計画してきたこの日までやっと辿り着いたのです。
(よくやったね)と褒めてやりたい。
しかし、今日まで何をしたかと振り返れば、仕事、趣味、仕事、旅行、仕事……
何だか楽しげで良いですね。
独身の延長のままに 食事を作り、家事をする。
仕事疲れで寝込んだ妻を 介抱したり、庇ったりと甲斐甲斐しくお世話する。
本当に 息子は嫁に行ったんだと 傍目から見てるとそう思う。
「おふくろ」と尋ねてくるのは、料理のレシピなのはどうしてよ?
「この味が好きなんだ。忘れないように覚えようと思ってさ」
(こいつー!そんな泣きポイントをいつの間に覚えたんだ)
でもね……
味付け適当、目分量の配分を 説明するのは難しいのです。
配分は、味を覚えた舌を頼りにしてちょうだいね。
またひとつ頼もしく感じる息子は、また一歩遠く感じるところへ行ってしまったように思うけど、成し遂げていくことと、人を慈しむ気持ちは教えてあげられたと思ってもいいよね。
ふたりからのご招待の披露宴。
ちょっぴり涙も出そうですが、それはきっと嬉しい涙と寂しい涙。
涙が、無色透明で良かった。異なる色ならば、心がばれてしまうものね。
というわけで
『本日、息子と嫁の挙式披露宴に行きます』
― 了 part2 ―
作品名:本日、息子が嫁に行きます 作家名:甜茶