アイラブ桐生・第二部 17~19
運悪く、途中からこの様子をのぞき見に来た茨城も、
企みに巻き込まれました。
しかし、長時間もモデルを頼むと、京子は身重だから・・
と言いかけた処で、百合絵にスケッチブックで、本気で殴られました。
(もう少し空気を読め。このとうへんぼく。)
急接近してきた百合絵の両目が、本気の怒りで燃えていました。
(そうだ、まだ解決したわけでは無い。これから先が本番なんだ・・・)
百合絵の意図するところは、よくはわかりません。
とにかく展覧会に出す時のように、自分の代表作を仕上げるつもりで書けと
きつい宣言をされてから、6人によるデッサン会が始まりました。
ただしモデルの京子にはすこぶる優しいデッサン会でした。
10分もすると、もう休憩が入ります。
モデルが休息している間は、めいめいに細かい部分を仕上げるようにと、
勝手に百合絵がルールを決めてしまいます。
結局、モデルを見ながら書いている時間よりも、
細部をしあげている時間のほうが多くなってしまいました。
百合絵は京子にはりついたままです。
妹と世間話をしている姉のような雰囲気がありました。
いろいろな角度から書かれた、京子の作品集が出来上がりました。
やはりここでも百合絵の画が、ひときわ抜きん出ていました。
つぶらに描きこまれた京子の瞳の中には、人生そのものを覗きこんでいるような、
凄さと、迫力が秘められていました。
それでいて、どこかに心になごむような優しい光も含まれています。
百合絵の持って生まれた才能に脱帽しました。
百合絵の筆は、女の本性どころか、人の心の奥深くまで表現しきっています。
絶望と希望が同時に存在をするこの京子の瞳の中に
一体百合絵は、何を見つけたのでしょう・・・・
画家の筆は、人そのものを描き出す。
やはりデザインの世界とは格段に違う目線の深さに、
驚愕を覚えた一瞬です。
作品名:アイラブ桐生・第二部 17~19 作家名:落合順平