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最後の魔法使い プロローグ

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おそらくドラゴンの部隊はアレンを探すために駆り出されたのだろう。目と鼻のいいドラゴンは獲物をすぐに見つけられるし、見つけたらその場で焼き殺すこともわけない。未だ捕まっていないのは、運がよかったのと、アレンが魔法を使いこなせたおかげだった。ドラゴンが近くを通りかかるたび、アレンは呪文を唱え、ドラゴンの嗅覚を麻痺させる魔法を使ったり、森の木々で目をくらます魔法を使った。どれもアレンが学校で習った魔法ばかりだったが、その場しのぎくらいの力にはなった。
だがそんな小手先の技がいつまで使えるのか、アレンは不安でしょうがなかった。捕まったらどうなるのか、明らかではあったが、そうだという確信はなかった。最悪の事態を考えるたび、アレンは腹をえぐられるような気持ちになった。
家族はみんな無事だろうか、とアレンは考えた。もはや故郷に戻れない。逃げ続けるしかない。でもどこへ?
アレンは、これが悪夢であってほしいと思っていた。本当は何かの間違いで、今夜家に帰れば、母の温かい食事が待っているはずだ。思えば、もう何日もまともな食事にはありつけていなかった。森の中にはリンゴや木イチゴなどが生い茂っているが、まともに熟した果実はなかった。なおさら、アレンは母の作るスープが恋しくなった。いつもは夕食に出る旅文句を言っていたのに、なぜかそればかり恋しかった。
アレンは両膝を抱え込んだ。体中の痛みより、さみしさと心細さで押しつぶされそうだった。