最後の魔法使い プロローグ
プロローグ
アレン・フォン・ジアーズはごつごつした岩肌の上で目を覚ました。
「どこだ、ここ…?」
アレンは起き上がると、寝ぼけた頭で自分に問いかけてみた。家のベッドとは大違いの寝心地だった。どうも洞穴で一晩を明かしたようだ。そこは大人一人がぎりぎりで入れるくらいの大きさしかなかった。洞穴の中は、狭い入口から入ってきている光でようやく朝だとわかる程度で、まるで夜明けの空のように薄暗かった。
せまい岩場で寝ていたせいか、アレンの体中が鈍く痛んだ。それ以外にもやたら擦り傷や切り傷があり、アレンは自分の置かれている状況を思い出した。
「そうだ…俺、逃げてるんだ…」
この洞穴には昨夜、雨宿りのつもりで入ったのだった。雨はすっかりあがっていたが、ついでに夜も明けてしまったようである。岩肌から朝露が落ちてくる。ひんやりとしたその感覚は、アレンの目をはっきりと覚まさせるのに十分だった。
アレンの足は血まめだらけで、触ると激痛が走った。走っている途中に何度も転んだせいで、体のあちこちが傷だらけだ。
もう何日、こんな風に逃げ回っているのだろうか、とアレンはため息をついた。
故郷の街、ロウア―ウェストは政府軍の焼き打ちにあって壊滅状態だ。昨日の状態で、遠くからでもまだ煙が確認できるほどだから、きっとまだ燃えつづけているのだろう。
逃げている間、何度もドラゴンが頭上を通っていたのを思い出した。そのドラゴンは明らかに政府軍の乗りものだった。火を吐いて暴れるドラゴンは、同じく火の使えるアッパー(上流族)しか飼いこなせない。同じように、この国の一切の政治と軍事はアッパーが取り仕切っている。ロウアー(下流族)はそれに従うしかないのだ。どんなにひどい差別を受けても、ロウア―が使う『地の魔法』では国を守ったりすることはできないし、何よりアッパーの魔法の方が格段に強かった。
アレン・フォン・ジアーズはごつごつした岩肌の上で目を覚ました。
「どこだ、ここ…?」
アレンは起き上がると、寝ぼけた頭で自分に問いかけてみた。家のベッドとは大違いの寝心地だった。どうも洞穴で一晩を明かしたようだ。そこは大人一人がぎりぎりで入れるくらいの大きさしかなかった。洞穴の中は、狭い入口から入ってきている光でようやく朝だとわかる程度で、まるで夜明けの空のように薄暗かった。
せまい岩場で寝ていたせいか、アレンの体中が鈍く痛んだ。それ以外にもやたら擦り傷や切り傷があり、アレンは自分の置かれている状況を思い出した。
「そうだ…俺、逃げてるんだ…」
この洞穴には昨夜、雨宿りのつもりで入ったのだった。雨はすっかりあがっていたが、ついでに夜も明けてしまったようである。岩肌から朝露が落ちてくる。ひんやりとしたその感覚は、アレンの目をはっきりと覚まさせるのに十分だった。
アレンの足は血まめだらけで、触ると激痛が走った。走っている途中に何度も転んだせいで、体のあちこちが傷だらけだ。
もう何日、こんな風に逃げ回っているのだろうか、とアレンはため息をついた。
故郷の街、ロウア―ウェストは政府軍の焼き打ちにあって壊滅状態だ。昨日の状態で、遠くからでもまだ煙が確認できるほどだから、きっとまだ燃えつづけているのだろう。
逃げている間、何度もドラゴンが頭上を通っていたのを思い出した。そのドラゴンは明らかに政府軍の乗りものだった。火を吐いて暴れるドラゴンは、同じく火の使えるアッパー(上流族)しか飼いこなせない。同じように、この国の一切の政治と軍事はアッパーが取り仕切っている。ロウアー(下流族)はそれに従うしかないのだ。どんなにひどい差別を受けても、ロウア―が使う『地の魔法』では国を守ったりすることはできないし、何よりアッパーの魔法の方が格段に強かった。
作品名:最後の魔法使い プロローグ 作家名:らりー