CROSS 第17話 『Difference』
第2章 キャンセル
【時間軸】 … 山口が旅客ヘリで移動している頃
【場所】 … 同じ世界
『ジャングル』 上空
山口に貨物機ではないと見破られた輸送機は、順調にファ・ディールの空を飛んでいた。異次元空間でも航行できる特殊なジェットエンジンは、アリの手足のように6つあった。
コクピットでは2人の乗員の男が、操縦をコンピューターに任せて、今後の打ち合わせをしていた。2人とも軍服を着ているわけではなかったが、ただの民間人にはとても見えなかった。
「ポルポタで迎えの機に荷物を移す際だが」
「今は冬で、観光客は少ないから大丈夫じゃないか?」
「だが、住民に怪しまれてはまずい」
乗員の会話から、どうやら、この輸送機には極秘の重要な物が積まれているようだった……。
ドーーーン!!!!!!
そのとき、コクピットの後ろから爆発音がして、激しい振動がした。そして、警告音が鳴り響き始めた。
「なんだ!!!」
乗員の1人が叫んだ。
『貨物室部分の隔壁が破損、貨物室内で火災が発生。エンジンおよび操縦系統に損傷あり』
と、コンピューターは冷静な口調で告げた。
「大変だ!!! 積荷が!!!」
乗員の1人が消火器を持って、貨物室へのドアを開けた。ドアのすぐ目の前に炎があり、炎の熱気がコクピットを襲った。
「うわ!」
乗員の1人が消火器で炎を消し始め、もう1人は手動で輸送機の操縦し始める。
炎はだんだん収まり始めたが、エンジンがダメージを受けているため、だんだん高度が低下し始めた。下はジャングルで、垂直離着陸も不可能だった。
『プルアップ! プルアップ!』
コンピューターが上昇するよう警告し始めた。高度計の数値は200メートルを切っており、墜落は避けられそうになかった……。
さらに、前方に高い塔があり、塔の屋上にある航空障害灯の光がどんどん迫ってきていた……。その塔への激突はとても避けられそうになかったが、乗員は必死の操縦を続けた。
バーーーーーーーン!!!!!!
必死の操縦の結果、塔への激突は避けられたが、塔の屋上に墜落してしまった……。激しい衝撃音が鳴り響き、塔は衝撃で揺れた。
消火作業をしていた乗員は、墜落の激しい衝撃で、貨物室の壁にぶつかり、フロントガラスの虫のようにグシャリと潰れて即死した……。また、操縦していた乗員も、乗員が使っていた消火器がすごい勢いで後ろから頭部に激突し、頭部が砕け散って即死した……。
機内は一瞬静かになったが、消えかけていた炎が、墜落によって、息を吹き返しており、炎による音が少しずつ大きくなっていった……。
墜落により、屋上にあった4つある航空障害灯のうち2つが壊れ、手すりが一部壊れた。そして、屋上の石床にはヒビが入った……。
作品名:CROSS 第17話 『Difference』 作家名:やまさん