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CROSS 第17話 『Difference』

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【時間軸】 … 同じころ
【場所】 … 同じ世界
       『魔法都市ジオ』 魔法学園



「お久しぶりです」

 山口はそう言うと、『坂角 ゆかり』と書かれた菓子折を、目の前にいる変な絵が書かれた円盤状の生物に差し出した。
「…………」
その生物は、無言でうなずいた。すると、どこからか緑色の髪をした少女がやってきて、山口から菓子折を受け取り、またどこかに立ち去った。

 山口は、魔法学園の図書室にいた。図書室の一角には、不気味な実験装置があった。山口はイスに座っており、目の前にその生物がいた。ちょうど授業中らしく、図書室に学生の姿は無かった。
「士官学校ではお世話になりました。あの出張講座のことを思い出します」
「……ハトを出せるようになったか?」
その生物は『ヌヌザック』という名前で、この魔法学園の教師だ。大日本帝国連邦の総合士官学校で、山口たち相手に、出張講座を開いたこともある。その講座は自由参加で、ちょうどヒマだった山口はそれに参加したわけだ。
「いいえ、できません。魔力なら出せるんですが」
「やれやれじゃ」
ヌヌザックは、あきれた口調でそう言った。緑色の髪の少女が図書室に戻ってきて、本棚の本を探し始めた。山口をその少女をチラリと見てから、
「あそこにいる可愛い女の子は誰ですか?」
と、ヌヌザックに尋ねた。
「……私の娘みたいなものだ。手を出したら、ただじゃおかんぞ?」
ヌヌザックが脅すような口調でそう言うと、山口は「冗談です」とだけ言った。
「それで、菓子折なんか持ってきて、何の用で来たんだ?」
「ジオに用事があったので、ついでに挨拶をしておこうと思いまして」
「ヘタクソな社交辞令はいいから、目的を言え!」
ヌヌザックの強い口調に、山口は観念したという様子で図書室を見回し、
「……実は、その用事の中にこの図書室の本を借りてこいというものがありまして」
「やれやれ、やっぱりか。来年の魔法学園の標語は、『大日本帝国連邦の連中には気をつけろ』だな」
「この魔法学園の生徒じゃないと、本の貸出はできないと言われちゃいまして」
「……誰の頼みかによるな」
山口はもう一度図書室を見回して、聞き耳を立てたりしている者がいないかを確認した。すると、あの少女がこちらをじっと見ているのがわかった……。
「あの女の子をなんとかしてもらえませんか?」
山口がヌヌザックにおそるおそるそう言うと、事情を察してくれたヌヌザックは、
「エメロード!!! ちょっと鳩サブレを買ってきてくれんか?」
その少女に用事を言いつけてくれた。
「……わかったわ」
エメロードと呼ばれた少女は図書室から出ていく……。その際、山口をジロリと一瞬睨んだ……。