CROSS 第17話 『Difference』
第1章 CROSSの冬休み
第17話 『Difference』
【時間軸】 … 異次元暦42733年 12月13日 昼前
【場所】 … 『ファ・ディール』(『聖剣伝説LOM』の世界)
『港町ポルポタ』 入り江
《この章での推奨BGM》
・ローリングストーンズ 『Satisfaction』
『I can't get no satisfaction. (私は満足することができません。)』♪
『I can't get no satisfaction. (私は満足することができません。)』♪
『'Cause I try and I try and I try and I try. (なぜなら、私は試してみて、私は試してみて、私は試してみたからです)』♪
『I can't get no! I can't get no! (私は満足できない! 私は満足できない!)』♪
夏場は異次元中からの観光客で賑わっているその海岸を、2人の若い男が歩いていた。彼らは水着ではなく普通の私服姿で、残念そうな様子で、他に誰もいない冬場の海を見ていた。海から届く冷たい潮風が、彼らに容赦なく吹き付けていた。
「冬に海に来てもなあ」
「こんな冬の海で泳ぐなんて、馬鹿だけだぜ」
2人の若い男は歩きながらそう言った。1人はガリアで、もう1人はウィルだった。
彼らは私服だったわけだが、腰や脇にあるピストルが入ったホルスターから、普通の観光客とは見分けることができた。2人とも本当は、銃が入ったホルスターなど装備していたくないのだが、山口から、護身用のピストルと身分証明書を携帯するように命令されているので、仕方なく装備しているのだった。
ついさっき、彼らはここから少し離れた海岸で、マーメイド1人とセイレーン2人の可愛い3人組の女の子に遭遇し、さっそくナンパしたのだが、ホルスターを装備していたせいで、軍人だとバレ、マーメイドの女の子に思いっきり冷たい海水をお見舞されたのだった……。そのときのマーメイドの様子から考えると、もし、異次元では悪名高いCROSSだとバレていたら、冷たい海の中に沈められていたことだろう……。
「まだ乾いていない……」
ウィルは困った表情でそう言った。
「早めに昼食を取って、ホテルで休もうぜ」
服が濡れていることを気にしてない様子のガリアがそう言った。
「昼食って、また『海の幸』っていうレストランか?」
「あそこの生ガキ、美味しいんだよ!!!」
ガリアが今にもよだれを滴らしそうな様子でそう言った。ウィルは仕方なくうなずくと、2人は海岸から立ち去っていった。
山口少佐たちCROSSは、あの公聴会の後、また司令部基地に行き、報告などを終えた。本当ならばそのまま新しい任務につくのだが、帝国連邦陸軍のスポンサーである紅魔館からの「特別な計らい」で、CROSSはしばらく休暇に入っていいことになったのだ。ただ、いろいろな理由から、休暇を過ごせるのは、この『ファ・ディール』という世界のみとなった……。
それでも始めのうちは、みんな大喜びで休暇を満喫した。しかし、1週間もしないうちに、任務につきたい気分になっていった。みんな、戦闘が日常という感覚になってしまっていたのだ……。PTSDらしき症状になってしまっている者もおり、住民や他の観光客などに迷惑をかけてしまう者もいた。
現在、多くのCROSSのメンバーは、ここ『港町ポルポタ』に滞在しており、山口含む一部のメンバーは、他の場所に観光などをしに行っている。
作品名:CROSS 第17話 『Difference』 作家名:やまさん