CROSS 第17話 『Difference』
暗いジャングルの中を、山口と佐世保とガリアとウィルが慎重に
歩いていた。山口はときどき立ち止まり、現在位置と敵の気配を探っ
ていた。
タタタ!! タタタ!!
突然、数回の銃声が響いてきて、すぐに激しい銃声が響いてきた。
自分たちを狙っているわけではなく、少し離れた場所で銃撃戦が繰
り広げられているようだ。ヘーゲルたちのおとり部隊と敵部隊が交
戦しているのだろう。
「ナチュラルは帰れ!!!」
というザフト兵の罵声が後ろから聞こえてきたので、山口たちはう
まく敵をやり過ごせたということだ。
山口たちは、ヘーゲルたちの無事を祈りながら歩き続けた。
しばらく歩くと、目的地である『レイリスの塔』に着いた。幸運
なことに、あれから一度も敵と遭遇しておらず、ヘーゲルのおとり
作戦は成功したようだ。
「山口さん、かなり燃えているみたいですよ」
佐世保が塔の屋上を指さして言った。屋上から黒煙が上がっていた。
輸送機が燃えているようだ。
「じゃあ、積荷が炭にならないようにいそがないとな」
「積荷って、工芸品でしたっけ?」
ウィルが山口に尋ねる。
「……ああ、そうだ。とても価値がある文化遺産なんだとさ」
「へー」
情報部からの書類には、積荷が『アーティファクト』だという事実
は、誰にも教えないように書かれていた……。だから、山口は書類
に書かれている嘘の説明しかできなかった……。
山口たちは塔の出入口の門へやって来た。しかし、門のところで
4人は息を飲むことになった……。
「誰か先客がいるみたいですね」
ガリアが口を開いた。
門に侵入防止として設置されていたフェンスドアが何者かに壊さ
れていたのだ。フェンスドアの鎖のカギは4ケタの番号制で、情報
部の書類にはその番号が記してあった。しかし、その鎖とカギは
地面に落ちていた。開ける手間は省けたが、まだ塔の中にいると思
われる存在をなんとかしなくてはいけないのだ。
山口は塔の中と後ろのジャングルを見てから、
「ガリアとウィルはこの門で待ち伏せしろ。ジャングルから敵がやっ
て来ても、塔から敵が出てきても対応できるようにな」
そうガリアとウィルに命令した。
「了解です」
ガリアとウィルはそう言うと、抜群の待ち伏せポジションを探し始
めた。
「佐世保、行くぞ。オレたちが一番乗りするんだ」
「はい!」
山口と佐世保は塔の中へ駆け込んでいった。
作品名:CROSS 第17話 『Difference』 作家名:やまさん