CROSS 第17話 『Difference』
だが、突然、敵兵が近づいてくる気配が消えた。
「山口さん、大丈夫ですか?」
佐世保の声が聞こえてきた。その声は、間違いなく敵兵がいた場所
から聞こえてきていた。
おそるおそる、木の影から顔を出して見てみると、佐世保がうつ伏
せで倒れている敵兵の近くに立っていた。倒れている敵兵の首には深
い切傷があり、佐世保のナイフからは血が垂れていた。彼女が敵兵を
片付けてくれたのだ。
「大丈夫だ。ありがと」
山口は礼を言うと、敵兵の正体を確かめようと、暗い森の中から月の
光で少し明るい駐車場へと、敵兵の死体を引きずっていった……。
「少佐、この部分を見てください」
敵兵の死体を調べていたヘーゲルが山口に言った。山口はヘーゲ
ルが指で示した部分をじっと見た。敵兵の服に砂時計のようなマー
クがあった……。
「クソ!!! なんでこんなところに!!!」
その部分を見た途端、山口は毒づいた……。どうやら、敵兵の正体
がわかったようだ。
「おそらく、プラントのザフトは我々が回収する物を狙っているの
でしょう」
ヘーゲルは冷静にそう言った。この敵兵は、大日本帝国連邦とも戦
争中のプラントのザフト兵だった。異次元最強の帝国連邦も苦戦を
強いられているが、今までは一度もこの世界に観光目的以外でやっ
て来ていることは無かったのだ。帝国連邦の監視網が弱まっている
ということだろう。
「こんな最悪の装備で、ザフトに勝てるわけないだろうが!!!」
山口は地面に転がっていたAK47を蹴っ飛ばした。この銃の持ち
主は、衛生兵に救護を受けていた。ガリアとウィルは顔を見合わせ
ており、佐世保はザフト兵のポケットを漁っていた……。
「向こうも極秘作戦のはずです。ザフトなら、もうモビルスーツを
使ってきているはずですし、それほど敵勢力は大きくないでしょ
う」
ヘーゲルはまるで天気予報のようにそう言った……。
「向こうはコーディネーターなんだぞ。テレビゲームで勝負してく
れるというのなら、コカコーラと堅あげポテチを持っていってや
るつもりだ」
「敵がやっかいな存在だということはわかっています」
「わかっているなら、戦うのは無謀だとわかるよな?」
「そこで、うまく戦闘を避けていくわけです」
ヘーゲルはそう言うと、ここと塔の場所が示めされた立体地図を小型
コンピューター端末で表示した。
「山口少佐は何人かを連れて、ジャングルの中を進んで塔に向かっ
てください。私は残りの隊員とともに正面から進んでおとりにな
ります」
「おとりだって気づかれたら終わりだぞ」
「この世界で慣れずに緊張しているはずです。なので、おとりだと
気づくまでには時間がかかるでしょう」
「……わかった。それでいこう」
山口は仕方なくその作戦でいくことにした。
作品名:CROSS 第17話 『Difference』 作家名:やまさん