CROSS 第17話 『Difference』
第3章 「工芸品」の回収
【時間軸】 … その日の夜
【場所】 … 同じ世界 ジャングルへの入口付近
山口たちCROSSは、情報部が用意した民間仕様のトラック数台に乗り、ジャングルの入口に着いた。目的地である『レイリスの塔』は、このジャングルの向こうにあり、ジャングルの中は歩いて通るしかないようだった。夜空には白い月があり、トラックをうっすらと照らしていた。
数台のトラックは、今は誰もいない駐車場に止まり、そのトラックから、まだ酒の酔いが覚めてない様子の隊員たちが次々に降りてきた……。隊員たちは、久しぶりの任務に対する興奮と酒酔いの勢いで、山口から任務につくことへの命令を快く受けいれてくれた。自分たちの大事な休暇が情報部のヘマのせいで台無しになったという事実に、ほとんどの隊員たちは気づかない様子だった……。ヘーゲルは気づいていたが、任務を嫌がっているわけではないようだ。。
休暇中でCROSSの制服がなかったので、全員が私服だった。おまけに、用意された武器は、もう異次元中にも広がっている自動小銃の『AK47』と手榴弾だけだった。幸い、ピストルを護身用として持ってきていたので、慣れたピストルだけを使うことにした隊員も少なくなかった。山口も『FNファイブセブン』という御自慢のピストルだけを使うことにした。
隊員たちはヨタヨタと集合すると、山口の指示を待った。少しして、山口が駐車場の簡易式トイレから出てきた。
あれからも飲んだらしく、山口もまだ酔っ払っていた。集合している隊員たちの前に向かおうとしたとき、山口は地面の石でつまづいて転びかけた……。
ターーーン!!!
転びかけた山口の顔のすぐ近くを、一発の銃弾が銃声とともに通り過ぎていく……。もし転びかけていなければ、銃弾が頭部を貫通していたことだろう……。
「敵襲だ!!!」
ウィルが叫んだ。突然の敵襲に、隊員たちの酔いは一瞬で解けた。隊員たちは、特殊ゴーグルを装備し、敵を探した。山口も攻撃を受けていることに気づき、敵を探し始めた。
敵がいる場所はすぐにジャングルの中だと判明した。なぜなら、一斉に発砲してきたからだ。しかし、暗闇で敵の詳しい正体はわからなかった。ただ、どこかのちゃんとした兵士だということはわかった。飛んできた銃弾に何人かの隊員が倒れ、隊員たちは、特殊ゴーグルに映っている敵兵を撃っていった。敵兵の数は5人だけのようだ。
しかし、敵兵たちには相当実力があるらしく、なかなかケリがつかなかった。そこで、山口はジャングルに飛び込み、横から敵兵を狙い撃った。2人倒せたが、最後の1人が的確に対応し、山口は遮蔽物である木の影に飛びこんだ。この木から少しでも身を出せば、すぐに撃たれてしまう状況だった。山口は手榴弾も装備しておけば良かったと少し後悔した。
敵兵が近づいてくる気配があり、山口はピストルを強く握り、敵を待ち構える。銃同士の勝負は、あっという間に決まるものだ。
作品名:CROSS 第17話 『Difference』 作家名:やまさん