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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ぼくとフーボの日々

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「おはようございます」
 朝、台所に行くと、ぼくよりも元気な声でフーボはあいさつした。お母さんは、ちょっとどきっとしたようだけど、ふりむいて作り笑いをしておはようと言った。
「おっはよう」
 もうご飯を食べ終わったお姉ちゃんは、フーボ以上に元気にあいさつを返してきた。
「じゃあね。フーボ。わたしはもう学校行くから、また今夜ね」
 お姉ちゃんは電車で一時間かかる高校に通っているから、うちでは一番早く家を出る。
 顔を洗っていたら、お父さんが起きてきた。
「お父さま。おはようございます」
 フーボが声をかけたので、お父さんはちょっととまどった顔をしたけど、やっぱり落ち着いたふりをして、
「うん。お。おはよう」
と返した。ぼくはなんとなくおかしくてくすっと笑った。
「お父さま。わたしのことはフーボと呼んでください」
「お、そ、そうか。フーボね。いい名前だな」
 お父さんの返事はまだぎこちない。
「はい。わたしも気に入ってます」
 フーボはまだお父さんと話したがっているようだけど、お父さんは朝こうれいの長いトイレタイムなので、ぼくはさっさとキッチンに行った。
「いただきます」
 ご飯を食べようとしたら、フーボがいった。
「主のお父さまより先に食べていいんですか?」
「だって、しょうがないよ。お父さんのトイレは長いんだから。それにぼくも学校へいかなきゃならないし」
 そもそもなんでそんなこというんだよ。フジツボのくせに。
「本当はみんないっしょがいいんだけど、それぞれ家を出る時間がちがうのよね」
 お母さんはもう、ふつうにフーボに向かってしゃべっている。やっぱり女の人の方がなれやすいのかな。
「そうですか。差し出がましいことを申し上げて失礼いたしました」
 フーボがあんまりバカていねいなので、お母さんはふきだしちゃった。
「あ、お母さま。わたしのことはフーボとお呼びください」
「そう。フーボね。かわいい名前だわ」