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茶房 クロッカス 番外編

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 そして俺は、改めて、というように真面目な顔で彼を見た。
「――ところで、この『笹沢四方山』っていうペンネームは?」
 まさかふざけた名前だとは言えないから、そこだけはぐっと飲み込んで聞いた。
「ああそれねっ。実は昔からある作家のファンでね、彼の苗字を縁起かつぎに戴いて、あ、もちろん勝手に……だけどね。それで下の名前を何にしようかと考えたんだけど、なかなかいいのが思いつかなくてさ。ふと思いついたのが「四方山話」さ。――ああそうだ! どうせこれからも書くとしたらきっと四方山話だよな――ってそう思ってさ。で、結局「笹沢四方山」ってことにしたのさ」
「へえぇ〜そういうわけかあー」
「うん。ちょっと変わった名前だろ?」
「うん、変わったと言うか……ふふっ」
「なんだよー、そのふふっ…は?」
 小橋さんは、少し眉毛を寄せて苦笑いした。

「それで、その笹沢って作家は、あの有名な……かぁ?」
「ああ、そうなんだ。でも、とても彼みたいには書けないけどな」
「それにしても驚いたなあ。まさか小橋さんが小説を書くとはねぇ」
「うん、自分でも驚いてるよ。最初は悟郎ちゃんから聞いたことをちょこちょこと書き留めていたんだ。それも何となくなんだけどねっ。で、それをある時読んでて、ふと『物語』にしてみよう。そう思ってさ」
「ふうーん。それにしても文才があったんだね。上手いよ」
「えっ、本当かい? 何だか照れるなあー。ハハッ」
 小橋さんは、いつもの俺みたいに頭を掻いた。
「だけどこうやって本を出したってことは、これからは作家になるのかい?」
「いや、とてもそこまではいかないよ。作家なんてそんなに簡単になれるものじゃないよ。今回の本だってそんなに売れてるわけじゃないし。しばらくは今の仕事を続けながら、暇をみて色々書いてみようかとは思ってるけど……」
「四方山話を?」
「ああ、四方山話を…」
 そう言うと、二人で目を見交わして「アハハハッ」と大きな声で笑った。