アイラブ桐生・第二部 14~16
半分ほど作業が終えた処で、休憩時間になりました。
ひげの社長は、夜食を運んでくるために自宅へ戻って行きました。
作業中の階段に腰をおろして、手持ち無沙汰に
夜食の到着だけを待っていたら、
「おい、飲めよ」と、茨城くんがジュースを
持って降りてきました。
「ありがとう」と受け取って、ひと口飲んでから
「もう長いの、この仕事?」と聞き直したら、
自慢そうに茨木君が鼻をこすりあげます。
「もう、3年になる。
見た通りに、あの社長も奥さんもいい人で、
居心地が良すぎて、いつの間にか3年がたっちまったぜ。
こう見えても、本当は、漫画家志望だ。」
えへへと、もう一度自分の鼻をこすりあげます。
へぇ~めずらしいなぁ~漫画家志望なんてすごいねぇ、と聞き返すと
「なぁに、そんなことくらい、
この東京じゃ、ちっともめずらしくなんかあるもんか。
此処は日本を代表する大都会だぜ。
東京には、ごまんといるんだ、そういう奴が。
みんなあこがれて上京をして、いろんな仕事で食いつなぎながら、
漫画家として芽がでるまでの、辛い辛抱をしているんだ。
おい群馬、お前、
マンガには興味があるか?。」
デザイナー志望だと答えたら
「それならまんざら畑違いでもない訳だ。じゃぁ、あとで俺の部屋に来い、
いいものを見せてやるぜ。」と誘われました。
茨城君の言う、いいものとは一体なんでしょう・・・・
そんなことを考えながら、初日のこの仕事は朝の7時になって
ようやく一段落をしました。
作品名:アイラブ桐生・第二部 14~16 作家名:落合順平