アイラブ桐生・第二部 14~16
あっというまに面接がおわり、
ともあれ、その夜から仕事に行くことが決まってしまいました。
仕事というのは、営業が終わったデパートで、
1階から3階までの階段部分のカーペットを張り替えるという作業でした。
踏まれて傷つき汚れたカーペットを剥がして、滑り止めをつけ直し
カーペットを新しく敷き詰めるという作業です。
午後の9時を過ぎると、巻いたカーペットと、
接着剤のはいった作業箱と掃除用具を積みこんで、自宅を出発しました。
目的のデパートに着くと、小物の入った道具箱を担ぎあげながら
それぞれに、1階から3階に分かれて張り替え作業が始まりました。
とりあえず、
カッターナイフを渡されて、階段の幅にカットしてくださいと
言われました。
慎重に切ったつもりでしたが、実際に合わせてみると
階段には大きな隙間ができてしまいました。
2階から「茨城」君が降りてきました。
「そういう時は、こうするの」と、
隙間のサイズに合わせて別のカーペットを切りとります。
床に両面テープを貼りつけると、その上から
ほつれた部分を強く擦り合わせます。
さらに、ヘラを使って両側の角を潰すように抑えこんでから、
ローラーを滑らせ、短時間のうちに、
綺麗に修正してしまいました。
「遠目で見たらわからないだろう・・こんなもんでいいんだ。
失敗なんか気にしないで、どんどんカットして作業をしてくれ。
失敗は成功のもとだ。
慣れれば誰にでもできる簡単な仕事だよ。
問題は、どうやって上手にごまかすかだけさ、
なぁ、群馬。」
それだけいうと茨城くんは、
また持ち場の二階に戻って行きました。
なるほど、上手にごまかせばいいんだ・・少し気が楽になり、
言われた通りの作業を、ひたすら延々と繰り返すことになりました。
作品名:アイラブ桐生・第二部 14~16 作家名:落合順平