星と月と幽体
オレは何を望んでいたのだろう。目の前に若い女性がいる。あれだけ思っていた覗きが出来たが、ぜんぜん艶めかしくはない彼女の幽体がいる。でも、彼女はオレに興味をもったように思えた。
―あなたも出来たんですか―
音声ではない意識のようなものを感じた。
―ああ、最近ね―
私も返事をする。
―私、はじめてなの、ちょっと怖い―
オレは急速に彼女を好きになっていくのを感じた。
―あ、心配ないよ。オレもちゃんと戻れるか心配したが、ある程度時間が経ったら戻っているよ―
彼女がにっこり微笑んだ。オレは親愛の気持ちを表そうとして握手を求めた。彼女も手を差し出す。ふたつの手が確かに交差したと思ったが、何も感じられず、一瞬二人で目を合わせ、それから同時に笑った……いや、正確には笑った表情をしただろう。
改めて彼女の部屋を眺め回し……目の回る感覚がして、気付いた時は自分の布団の中だった。オレは体験したことを反芻して、ますます彼女が好きになってしまった。