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砂金 回生
砂金 回生
novelistID. 35696
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トレーダー・ディアブロ(8)

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 サンダーソンは一歩下がると、そのドアに前蹴りを食らわせた。
 すると、大きな音を立てて家のドアが開いた。
 彼は咄嗟に入り口付近に目をやる。
 入り口周辺に人の気配は無い。
「こちら、サンダーソン。潜入口を確保。これより潜入します!」
 彼はヘッドセットに告げると、アサルトライフルを構え、西京宅に侵入した。
 彼のすぐ後ろを部下二名が付いて来る。
 彼らは出来る限り壁に背を付け、死角を作らない様に家の中を進む。
 暫くすると、サンダーソンの無線に部下の声が聞こえた。
「こちらスミス。勝手口から潜入完了。ターゲットの姿無し……」
「こちらユング。ベッドルームに潜入完了。ターゲットの姿無し……」
「オーケー。予定通り、ターゲットを捜索しつつ奥へ向かうぞ!」
「イエッサー!」
 正面入り口から三人、勝手口から二人、そしてベッドルームの窓から二人、計七名のSWTのチームは難なく西京宅に侵入した。
 部隊を三つに分けて侵入したのは、西京の退路を断つ為である。
 サンダーソンが玄関から奥に進んで行くと、キッチンからスミス、そしてその後ベッドルームからユングが現れた。
 まだ西京の姿は見つからない。
 やはり、彼は家の一番奥にあるトレーディングルームにいる様だ。
 チーム全員が合流し、彼らは西京宅の一番奥の部屋に入った。
 そして、彼らは家の奥にある暖炉の部屋に着いた。
 ここにも西京の姿は無い。
「行き止まり?」
「早合点するな、ユング! この家の見取り図を思い出せ! この部屋の奥にもう一つ部屋がある筈だ……!」
 サンダーソンは部下に告げると、顎でユングに先に行く様に命じた。
 ユングは暖炉の方に進み、他の隊員がその部屋を見回す。
「どこかに、奥の部屋への入り口がある筈だ! 探せ!」
 隊長の号令より、SWTの精鋭達が一斉に部屋を漁り始めた。隊員達は皆ソファーを引っくり返し、絨毯を剥ぎ取り、掛けてあった絵画を叩き落とした。
 しかし、それらしい入り口は見つからない。
 暫く全員で部屋中を探したが、入り口は見つからなかった。このままでは、ターゲットを発見出来なかった、という最悪の結果で任務が終了してしまう。サンダーソンは歯軋りをした。そんな恥ずかしい結果で任務を終わらせられるか……!
「隊長! これは……?」
 その時、暖炉を調べていたユングがサンダーソンに声をかけた。
 サンダーソンはすぐにユングの元へと行き、彼の指差す床を見た。
 暖炉の下から、部屋を横切る様に凹みがあるのだ。
 サンダーソンには、それがレールの様に見えた。
「なるほど。そういう事か……」
 彼はニヤリと笑うと、暖炉に向かう。
 そして、すぐに暖炉の上にある不自然なボタンを見つけた。
「これは……?」
 彼のすぐ後ろを付いて来たユングは首を傾げた。
「押してみれば分かる…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
 ユングは頼んだが、サンダーソンはお構い無しにボタンを押した。
 ユングは反射的に顔を伏せた。ユングだけではない、サンダーソン以外の全員が顔を顰めた。スミスは反射的にその場に伏せてしまった。明らかに不自然なボタンは、彼らの職業上、何かのトラップに見えたのだ。
 しかし、隊員達の予感は外れ、暖炉は爆発せず、横にスライドした。
 予想通りだったのは、サンダーソンだけである。
 そして、元々暖炉があった所には鉄の扉が現れた。
「よし!」
 サンダーソンはビビっている部下達を放って、ドアに寄って行き、ドアノブを掴んだ。
 すると、意外にもドアに鍵は掛かっていなかった。重量感のあるドアを少しだけ開く。
 彼は開けたドアの隙間から中を伺う。しかし、中は暗くて良く見えなかった。
 彼はその場にしゃがんで、手を振って部下達にこっちに来る様に指示した。
 隊員七名全員が少し開いた鉄のドアの前に集まる。
「いいな? スリー……、ツー……、ワン……、ゴー!」
 サンダーソンのかけ声で、全員が西京のトレーディングルームに雪崩れ込む。
「フリーズ!」
「フリーズ!」
 各人動くなと叫びながら西京の姿を探す。
 しかし、中に入った隊員達は、トレーディングルームの様子に圧倒され、皆足を止めてしまった。
「なんだ、これは……?」
 彼らが目にしたのは、プラネタリウム。夜空に浮かぶチャートの星々だった。
「なんて……こった」
 流石のサンダーソンも声を出してその場に立ち尽くした。
 これが、西京育也のトレーディングルームなのだ。
「フリーズ!」
 その時、スミスの声がプラネタリウムに響き、サンダーソンは我に返った。
 彼はプラネタリウムの中央にある球体に、人影を見つけたのだ。
 他の隊員達は遅れてその球体に銃を向けた。
 西京育也は、その透明なガラスの球体の中にいた。
 彼は部屋の中に侵入してきた特殊部隊を気にする様子も無く、トレードを続けていた。
 隊員達は彼の入っている球体の正体が分からないので、抜き足差し足で球体に近づいて行く。
「西京育也、だな……?」
 サンダーソンは彼に標準を合わせながら聞いた。
 西京はサンダーソンの方を見もしない。
 だが、西京の顔は作戦会議の時に何回も確認した。彼が西京育也で間違いない。
「こちらサンダーソン、西京育也を発見しました。これより彼を捕獲します」
 サンダーソンはインカムに告げた。
「彼は何をしている?」
「トレードをしている模様です」
「すぐにそれを辞めさせろ!」
「イエッサー……」
 インカムにジョイナーの命令が返ってきた。
 しかし、この命令はすぐに達成出来るであろう。
 何せこのプラネタリウムの中、彼は特殊部隊の精鋭七名に囲まれている。最早彼は袋の鼠である。
「西京、今すぐトレードを辞めて、そこから出て来るんだ」
 サンダーソンが一歩彼に近づき話した。
 しかし、西京はアサルトライフルを持った男達に囲まれているにも関わらず、黙々とトレードを続けている。
 彼の前のモニターに次々と注文受付の画面が現れては消えて行く。
「ヘイ! 西京! 聞こえているのか? 今すぐトレードを辞めて出て来るんだ!」
 サンダーソンは更に西京に近づき、アサルトライフルを見せつける様に構えた。
 しかし、西京はトレードを辞める様子を見せない。
「チッ!」
 サンダーソンは舌打ちをすると、右腕を上げて合図した。
 それを見た隊員達は、一斉に回り込み西京を包囲した。もちろん、アサルトライフルの標準は西京に向けたままだ。
 隊員が西京を取り囲んだのを確認して、サンダーソンはスミスに顎で命令する。
 スミスは小さく頷き、西京が入っている球体に近づいた。
 現在球体はドーム状の部屋の丁度中央、地面から一メートル程の高さにあった。
 その球体は鉄の支柱に真っ直ぐ支えられている。
 スミスは鉄の支柱に足を掛け、一段上がると球体に手を掛けた。そして彼はその球体に取手等が無いか調べた。
 しかし、その球体には取手になりそうな物も、スイッチも無かった。
 それは、支柱に支えられている所以外は完全な球体であった。
 スミスはここからこの球体をどうやって開けたら良いか分からなかった。
 その中では、西京がスミスの姿を気にせずトレードしている。